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ノバセルPdMが「プロダクトマネジメントのおすすめ本」を語る

この記事は ノバセル Advent Calendar 7日目です。

こんにちは。ノバセルにてプロダクトマネージャーをやっている林です。 本記事では、私が今年読んだ本の中からプロダクトマネジメント関連のおすすめ本を2冊ご紹介したいと思います。

おすすめ本①:プロダクトマネージャーのしごと 第2版

1冊目は『プロダクトマネージャーのしごと 第2版 ―1日目から使える実践ガイド』です。

この本を一言で言うと「PdMが実際の仕事で成果を出すための心構え/TIPSが学べる本」です。 プロダクトマネジメントの単なるベストプラクティス解説ではなく(むしろべスプラを盲信する危険性が語られる)、様々に変化する組織/事業状況に上手く対応するための方法が書かれています。 かといって、「特定の場面にしか使えないTIPSの羅列」という訳でもなく、PdMとして仕事を進める上での指針となる思考法が豊富な具体例と共に載っています。

おすすめポイント

ポイント①:きれいごとだけではない「PdMとして上手くやるためのノウハウ」が詰まっている

これが本書最大の魅力だと思います。 本書の中では

  • プロダクトの方向性について、ステークホルダーからの「表向きの承認(積極的な承認ではない「よさそう」/沈黙等の曖昧な回答)」を信じてプロダクト開発を進めたら、リリース直前で「これは何だ?聞いてないぞ」とちゃぶ台を返される

  • プロダクトバックログの優先順位付けをするため、優先順位付けが「正しく」行われることを保証してくれるフレームワーク探しに固執する

など、PdMとして働く中で「その問題にぶつかるよね!わかる!」という事例が沢山出てきます。 「リアルなプロダクトマネジメントの現場で成果を出すための秘訣」が包み隠さず書かれており、非常に参考になります。 と同時に、「世界中どこのPdMも似たような問題に悪戦苦闘しているのだな。自分だけではない。」と背中を押してくれます。

ポイント②:気を付けるべき観点/アクションが端的にまとめられている

「取るべきアクションが明確」というのも、本書のもう1つの魅力です。 全部で16章あるのですが、各章の最後に「チェックリスト」が設けられており、その章で語られたことを実行に落とす際の強い味方になってくれます。

例えば、「2章:プロダクトマネジメントの CORE スキル」の末尾には

  • コミュニケーション上手とは「イケてる言葉で人の印象に残る話し方をする」ことではないことを忘れないでください
  • 自分自身とチームの透明性を高めるためには、たくさんの心地悪い会話をこなさなければいけないことを認識しておいてください

など、取るべきアクションが覚えやすくキャッチーな言葉で書かれています。

どんな人におすすめ?

個人的には「PdMを数年やっているが、一皮むけて成長したい!」という人におすすめです(まさに私です笑)。 これからPdMを始める方にも参考になるとは思うのですが、本の中に出てくる事例がリアリティを持って迫ってくる(そして、思い出したくない過去の失敗が走馬灯のように...)のはミドル~シニアを目指す方かなと思います。

おすすめ本②:Continuous Discovery Habits

2冊目は『Continuous Discovery Habits: Discover Products that Create Customer Value and Business Value』です。

この本を一言で言うと「顧客価値とビジネス価値を両立させるプロダクトを発見するための体系的な方法を学べる本」です。 残念ながら日本語訳が出ていないのですが、海外の方が書いたPdM向け読書リストには必ずと言っていいほど入っている一冊です。

おすすめポイント

ポイント①:「継続的ディスカバリー」の明確な定義が分かる

PdMであれば「定期的に顧客と話しましょう」「ユーザーインタビューをしましょう」というのは嫌ほど聞いていると思います。 ただし「定期的ってどれくらい?」「どんなメンバー/目的でするべき?」等がふわっとしていることも多いのではないでしょうか? 本書では「継続的ディスカバリー」の明確な定義が書かれています。

  • 少なくとも週1回以上顧客と接点を持つこと
  • プロダクトを作るチーム自身によって行われること
  • 小さなリサーチ活動の形式で行われること
  • (顧客/自社にとって)望ましいアウトカムは何か?を追求していること

特に「少なくとも週1回以上顧客と接点を持つ」はPdMにとって明確な指針になると思います。 私も本書を読んで以降、週1回以上は顧客と接点を持つように心がけています。

ポイント②:「継続的ディスカバリー」の一連の流れを理解できる

他のユーザーインタビュー系の本同様、本書でも

  • 顧客理解の最初の一歩はどう始めればよいのか?
  • ユーザーインタビューでする質問のアンチパターン
  • インタビュー結果をどう構造化するか?

等が記載されています。

一般的な本との違いとしては「顧客課題の発見/検証を一連のフレームワークで理解できる」点です。

本書では、大まかな流れとして

  • 目指すアウトカムの設定
  • アウトカムに紐づく「機会(Opportunity)」の構造化と検証
  • 機会に基づく「解決策(Solution)」の構造化と検証
  • 上記を継続的に回す習慣作り

という4つのステップで継続的ディスカバリーを体系しています。

また、体系を支えるフレームワークとしてOpportunity Solution Tree(通称「OST」)が提示され、本書で何度も言及されます。

※OSTの参考記事 www.productplan.com

詳細については本書を読んで欲しいのですが、使い方としては

  • この本で顧客課題発見の全体像を理解する
  • 個々のステップにおける詳細は専門の本を当たる

がよいと思います。

どんな人におすすめ?

「顧客課題発見系の本を色々読んで来たが、1本筋を通す体系を学びたい」という方におすすめです。 あと、「PdMが普段する会話を英語で書くとどうなるか?」も学べるので、ビジネス英語を勉強したい方にもおすすめ!

ノバセルの実務で活かしてみて

最後に、私のノバセルでのPdMの実務において、2冊の本で学んだことを活かしたケースについて話そうと思います。

活かした内容

  • 1冊目:過剰コミュニケーション(第4章:過剰コミュニケーションの技術)
  • 2冊目:真の課題に辿り着くには「一般的な状況でどうすると思うか?」ではなく「具体的な状況でどうしたか?」を聞く(Chapter Five: Continuous Interviewing)

※「過剰コミュニケーション」とは?:「最適なコミュニケーション量が分からず失敗するくらいなら、コミュニケーション過剰に倒した方がよい」という原則のこと

具体的なケース

あるクライアントの商談に同席していた時、「Aという作業が直近大変なんだよね」という話がポロっと出ました。 ただ、クライアントの社内用語を使って説明されたので、私としては「なんか大変そうだけど、具体的に何が大変か分からないなあ」という状態でした。 そのような状況で、今までの私の場合「頓珍漢な質問をしたら『なんかよく分からないことを聞かれた』と思わるんじゃないか?」「MTG後に同席メンバーと『あれってどういう意味だった?』を確認しよう」と質問を躊躇することが多かったです。

でも、ここは「過剰コミュニケーション」の原則に則って「馬鹿だと思われてもいいから徹底的に顧客に聞こう」と意思を固めました。 かつ、顧客への質問の仕方として「なんでAという作業が大変なんですか?」という一般的な状況ではなく、「Aという作業を実際に見せてください」という具体的な状況を聞くことにしました。 すると、よくよく顧客の話を聞くと「大変な作業Aが発生しているのは、定常的にやるべき作業Bが出来ていないから」「本当は作業Bを定常的に実施できるようにしたい」という話が出てきました。 「臆せず顧客に質問した結果、真のニーズに辿り着けた」瞬間でした。

これはほんの一例ですが、今後も学んだことを実務に活かしてPdMとして一歩も二歩も成長していきたいです。

まとめ

今回はプロダクトマネジメント関連のおすすめ本を2冊紹介しました。 気になった方は是非読んでみてください。

明日は弊社CTOが登場! 「今年購読を開始した AI 情報系 YouTube チャンネル」について書くということで、乞うご期待!