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ググるよりも先にAIへ。AI前提の開発しか知らない新卒エンジニアの「迷い」と「リアル」

はじめに

こんにちは。ラクスル Advent Calendar 2025 21 日目を担当する、プラットフォーム統括部でエンジニアをしている鍛治です。

今年の4月に新卒として入社し、配属されてからは主に Claude Code を使って開発をしています。

正直に言うと、これまでの開発で自分の手だけでガッツリとコードを書いてきた経験はほとんどありません

日々の開発ではググるよりも先に AI へ質問を投げ、ドキュメントを読む前にまず AI から噛み砕いた説明をもらう、というスタイルが当たり前になっています。

この記事では、そんなAI 前提の開発しかしてこなかった新卒エンジニアが日々の業務の中で感じていることや、うまく言語化しきれない違和感・迷いについて整理せずに書いてみようと思います。

AI の是非や結論を出したいわけではありません。

むしろ、今はまだモヤっとしている部分をそのまま残しておきたくて、この文章を書いています。

AI前提の開発で感じているメリット

オンボーディングがスムーズ

配属されてから感じている一番大きなメリットは、オンボーディングがかなりスムーズなことです。

知らないコードを読むときの心理的な負荷が小さく、初めて触るリポジトリでも AI に質問しながら処理の流れを追うことができます。

タスクを進める中で、触ったことのないリポジトリやこれまで経験のない言語を調査しなければならない場面でも、「まず全体像を掴む」というところまでは比較的早くたどり着けていると感じています。

アウトプットが早い(※アウトカムとは別)

AI を使うことで、コードを書くスピード自体は圧倒的に速くなります。

ここで言うアウトプットは、あくまで「コードが書ける」「形になる」という意味でのアウトプットで、それがそのままアウトカム(価値)につながっているかは別の話だと考えています。

ただ少なくとも、手が止まらず前へ進めるという点では大きな助けとなっています。

コーディング以外でも役に立つ

AI はコーディング以外の場面でもかなり役に立っています。

  • ドキュメントを書くとき
  • 英語の意味や使い方が曖昧なとき

こういった場面で、自然な形で質問できるのはありがたいです。

「文章を書く」「英語を読む」といった作業への心理的ハードルも下がっていると感じています。

面白い

単純に、面白いというのも正直な感想です。

AI を用いた開発がまだ過渡期にある今、その進化をリアルタイムで見られるのは非常に楽しいです。

Claude Code に関して言えば、ほぼ毎日のようにアップデートがあり、changelog を見に行くのが習慣になっています。

モデル自体も各社が鎬を削っていて、テキストだけでなく Nano Banana のような画像生成も含め、出力の精度が急速に上がっていくのを実感します。

迷い①:理解と学習についての違和感

AI を使って開発する中で、最近よく感じているのが理解や学習の仕方についての違和感です。

難しい概念の理解

難しい概念にぶつかったとき、今の私はとりあえず AI に聞いてしまいます。

噛み砕いた説明をしてくれるので、「なるほど」と思える状態まではすぐに到達できます。

ただ、それが本当に理解できている状態なのかには、正直自信がありません。

本来であれば、自分であれこれ考えたり、調べたりしながら時間をかけて理解していたはずの部分をかなりショートカットしている感覚があります。

この使い方で良いのか、今も判断がついていません。

わかった気になることが多い

AI の説明を読んで、「ふーん」と思った時点で理解したつもりになってしまうことがよくあります。

少し時間が経つと説明できなかったり、別の文脈で同じ話題が出たときにうまく繋がらなかったりして、そのとき初めて「あまり腹落ちしていなかったな」と気づきます。

AI がそれらしい説明をしてくれる分、自分の中で理解が浅いままでも前に進めてしまうのが怖いと感じています。

自分の言葉で説明できない

普段の開発は AI に聞きながら進めているため、ペアプロや対面でレビューをしてもらう場面ではパッと正確に説明できないときがあります。

その場で言葉にできないということは、やはりどこかで「わかった気になっている」だけなのかもしれません。

迷い②:主体性・負荷・アウトプットの問題

理解や学習の違和感と並んで感じているのが、自分がどれだけ主体的にアウトプットしているのか分からなくなる感覚です。

自らアウトプットする機会が少ない

AI を使っていると、そもそも自分の手でコードを書く機会がかなり少なくなります。

もちろん、生成されたコードをそのまま使うわけではありませんが、「白紙の状態から自分で考えて書く」という時間は、以前より明らかに減っています。

AI が書いたコードを理解できれば十分なのか、それとも自分で書ける状態まで持っていくべきなのか、このあたりの基準がまだ自分の中で定まっていません。

AIの圧倒的な出力に滅入る

AI はどちらかというと発散が得意な印象です。

複数の案や、それっぽく正しそうなコードを一気に出してくれる一方で、正確な知識が十分でない状態では、何を基準に選べばいいのか分からなくなることがあります。

生成されたコードを読むのにも意外と時間がかかり、結局間違っていてもう一度生成し直す、ということも少なくありません。

「書く時間」は短くなっている一方で、「判断するための力」はより求められていると強く感じています。

負荷をかけなくても仕事が回る

AI の性能が向上して、動くコードや最低限のドキュメントは一発で出せることが増えてきました。

極端な話ですが、

  • AI にコードを書かせる
  • レビュー依頼を出す
  • 返ってきたレビューをまた AI に食わせて直す

これを繰り返せば仕事としては一応成り立ってしまうものの、自分自身にはほとんど負荷をかけておらず、情報を横流ししているだけにも思えます。

AI の出力に対して、意識的に批判的な思考を持ち、深掘りしないといけない。そうしないと何も身につかないまま時間だけが過ぎていく気がしています。

迷い③:成長・評価・チームへの影響

ここまで書いてきた迷いは、個人の学習や主体性の話に見えるかもしれませんが、最近は成長の実感や評価、チームとの関わり方にも影響していると感じています。

個人の能力を評価される難しさ

AI を使うことで、ある程度のスピードや品質はすでに担保されてしまいます。

その結果、個人としてアウトプットの品質をさらに高めようとすると、AI の出力以上の理解や判断力が求められるようになります。

正直なところ、AI の出力を明確に上回るまでは、「誰がやってもアウトプットの精度はあまり変わらない」という状態になっているようにも感じています。

成長している気になっているだけじゃないか

最近は、エピックをある程度任せてもらい、少しずつ自分で進められるようになってきました。

ただ、それが本当に自分の能力が上がった結果なのか確信を持てません。

AI がなければ、アウトプットの品質が上がることと、自分の成長はある程度結びついていたと思います。

一方で AI があると、

  • AI の精度が上がった
  • たまたま良い出力(AI は確率で出力するので)を引いた

といった要素も絡み、アウトプットの品質向上が必ずしも自分の成長と一致しなくなります。

このズレが積み重なって、将来思ったほど成長できていないといった状況にならないか不安です。

人との関わりの減少

分からないことがあったとき、今はとりあえず AI に聞く、という行動が当たり前になっています。

本来であれば周りの誰かに聞いていたはずのことも、AI で自己完結してしまう場面が増えました。

その結果、

  • 周辺の業務知識を雑談の中で知る機会
  • ちょっとした会話から生まれる信頼関係

といったものを得られにくくなっている気がします。

質問される側からすると、集中を遮られる回数が減るというメリットはあると思います。

ただ、チームで開発している以上、コミュニケーションが減ることの負の側面がやはり大きいのではないかと感じています。

おわりに

この記事を書いてみて、自分はまだ AI とどう向き合うのが正解なのか答えを持っていないことを改めて実感しました。

AI は間違いなく便利で、今の開発を支えてくれている存在です。

一方で、理解の仕方や成長の実感、評価やチームとの関わり方についてうまく言語化できないモヤっとした感覚も残っています。

この文章は、そのモヤっとを整理するためというより、今の時点で感じている迷いをそのまま残すためのメモです。

「自分はどう感じているか」「どう向き合っているか」を考えるきっかけになれば幸いです。