RAKSUL TechBlog

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ROSCAFE TECH NIGHT #2 イベントレポート: CTO岸野が語るプラットフォーム開発と技術負債の本質

こんにちは、ラクスル広報の和田です。
11月21日(火)、ROSCAFE TECH NIGHT #2がラクスル目黒オフィスで開催されました。
このイベントには、ラクスルからCTO岸野が登壇。ほか、SODAさん、LinQさん、出前館さんのCTO/VPoEが一同に会し、テーマ「CTOやVPoEに求められる役割とは?」に基づいて熱いLTセッションが繰り広げられました。
本記事では、CTO岸野がLTで語った内容に焦点を当て、自身がどのようにしてCTOの地位に到達したのか、日常業務で直面する課題や現在の注力テーマについて、イベントの概要と共に紹介していきます。

ROSCAFE とは?

エンジニア専門のフリーランスエージェント「ROSCA」が運営するコミュニティの名称。このイベントでは、様々なプレイヤーが集まり、エンジニアリングの進化やこれからの展望について情報交換が行われています。

イベント概要

このイベントでは、時代の変化に応じてCTOやVPoEに要求される役割やリーダーシップの多様性に焦点を当てました。各登壇者は、組織の課題、解決方法、そして自身の役割の定義について、それぞれの視点でLTを行いました。

登壇者紹介

岸野 友輔(ラクスル株式会社 ラクスル事業本部CTO)
林 雅也(株式会社SODA 執行役員 CTO)
Kazuma Takeda(株式会社LinQ CTO)
米山 輝一(株式会社出前館 執行役員 IT本部 本部長 兼 VPoE)

LTセッション  (スピーカー:ラクスルCTO岸野)

CTOになった経緯

2017年、ラクスルに新卒第一号として採用されました。入社以来、印刷事業の中心である印刷のECサイトにおいて、表側の部分や裏側のシステム開発を担当し、パートナー様向けの印刷依頼システムの開発などに従事してきました。
また、プロジェクトとして印刷の発注を効率化するアルゴリズムの開発など、効果的なプロジェクトの立ち上げも行っていました。2021年には、ラクスルとして初めてのM&Aを実施し、段ボール製造の会社を傘下に迎えました。
プロジェクトやM&Aを通じた組織の発展に貢献し、2022年8月にダンボールワン社のCTOに就任。その後、2023年8月にはラクスルとの吸収合併により、現在はラクスル事業のCTOとして、統合後の組織の立ち上げ、開発スピードの向上、事業推進を担っています。

事業フェーズの変遷

印刷のEC事業からスタートし、急速な事業拡大と新規事業を展開してきました。特に、グッズのカスタマイズ可能なECサイトやアパレル・ユニフォーム事業の立ち上げなど、多岐にわたる挑戦を行ってきました。しかし、それに伴いシステムの技術的な課題が浮き彫りになり、技術負債が蓄積されていました。
当時、そのような状況を改善するための判断として採用されたのは、既存のシステムの拡張ではなく、新しいシステムの構築でした。この意思決定は正しかったと考えています。そうしたことで、柔軟性のある構造が作り上げられ、ラクスルは着実に成長しています。
現在は新たなフェーズに突入し、個別最適から中長期を見据えた全体最適への移行が進行しています。特に、全社的なプラットフォームの構築に注力し、購入者の利便性向上に焦点を当てています。
具体的なプロジェクトとして、ラクスルで購入したユーザーにとって非効率的だったECサイトの購買体験を向上させるための取り組みが進行中です。これにより、マイページや注文履歴の統合など、より統一されたユーザーエクスペリエンスが提供されることが期待されています。

開発組織のリーダー体制の変化

事業部を超えたアサイン変更の難しさやCTOへの一極集中が、事業運営において健全でない状態を招いていました。
その後、積極的な変革を行うため、新たな組織体制を導入しました。具体的には、Tech、 Bizの意思決定者を集約したTech意思決定機関の組成や、縦割りの個別最適から横軸での全体最適への転換です。新しい構造では、事業責任者やシステム部門、CTOなどが連携しやすくなり、迅速な意思決定が可能となりました。縦割りの組織から解放されたことで、より効率的で柔軟な開発体制が構築されたと思います。

現在のビジネスフェーズや組織の変遷を考慮すると、事業も進化する中でプラットフォームの構築が鍵となり、全体的な開発投資が不可欠です。
CTOは組織の目指すべき姿を描き、その推進をリードするリーダーシップが求められています。
同時に、技術を駆使して事業改造を促進し、レバレッジ可能なポイントを見つけ出すことが必要です。CTOがこれらの役割を果たすことで、攻めの要素を強調した役割に変容していると考えています。
新卒入社した当時から高めてきた事業解像度や事業変革プロジェクトのリーダーシップ経験を活かし、技術戦略を策定し、組織を牽引しています。

現在の注力テーマ

現在の主要な取り組みとして、私の注力テーマは大きく3つです。プラットフォームプロジェクトの推進、技術負債の解消計画の策定、そして開発組織の強化です。

1つ目のプラットフォームプロジェクトでは、成長を促進するために新規事業やM&Aなどの戦略を組み合わせ、状態を整えることで更なる発展を目指しています。

2つ目は、技術負債の返済計画の策定です。弊社のECシステムは事業において重要な位置を占めています。そのため、このコアなシステムにかかる技術的な負債に対処する必要があります。CTOとして、この技術的な側面を正確に認識し、適切な説明を通じて計画を進め、返済を推進することが求められています。 技術負債の返済計画の立案はCTOの役割の一環と考え、その計画をどう策定し、実行していくかについても具体的な取り組みを行っています。
特に、システムの注意深い監視と改善が不可欠で、実際にシステム量の見かけの変動に惑わされず、減少していく過程を明確に示すことが重要です。 技術負債の返済は挑戦的なプロジェクトであり、これをゼロに近づけるためには、計画をしっかりと実行する必要があり、そのための体制を整えています。

3つ目は、開発組織の強化に焦点を当て、計画の実現に必要な人材を育成・採用しています。具体的には、採用活動の強化、既存のメンバーがより活躍できるように、キャリアパスを整備し、個別のメンバーに焦点を当てた育成計画などが進行中です。これにより、計画の実現に必要な開発組織を構築し、全体の推進力を向上させています。

まとめ

本日改めて、ほかのLTも聞いていて感じたことは、CTOの役割は曖昧でありながらシンプルだということです。CTOは経営の中で最もテクノロジーを理解し、テクノロジー組織の中で経営も理解している存在として、必要なことをシンプルに進め、自らが最も得意とする分野で最も力を発揮できる場所に焦点を当て、柔軟性を持って変化することが重要です。今後も、確かなテクノロジー理解を持ち、成長に貢献していきたいと思います。

懇親会

LTセッション終了後の懇親会では、参加者と登壇企業のCTOやVPoEの皆さんがアットホームな雰囲気で交流し、興味深い話題を共有しながら、今後のテクノロジー業界やリーダーシップに対する期待などについて熱く語り合う場となりました。

おわりに

ROSCAFE TECH NIGHTに初めて参加させていただきましたが、技術やリーダーシップに関する情報交換が盛んで、カジュアルな雰囲気でイベントを楽しむことができました。
異なるバックグラウンドを持つ企業同士の交流も、やっぱりおもしろい!
ご用意いただいた軽食もマックとあり、ハンバーガー片手に交流をしている様子はカジュアルさを引き立てていました(笑)
参加いただいた皆さま、登壇者・関係者の皆さま、そして何より企画運営をいただいたRoscaの皆さま、ありがとうございました!
また、イベントでご一緒できる日を楽しみにしています!