こんにちは。ノバセルでデータエンジニアをやっている山中(@yamnaku_)です。 先日開催されたSnowflake World Tour Tokyo 2024 で「Data Superheroesが語る社内で『本当に使われる』データ基盤構築の道のりと展望」と題して登壇いたしました。なお、TROCCOを開発するprimeNumber社のスポンサーセッションにお呼びいただいた形で、機会をいただいたprimeNumber社様には感謝申し上げます。イベントは大変活況で、オフライン・オンライン合わせて4000人以上の参加者がいたようです。米国本社からCEO Sridhar Ramaswamy 氏も登壇していました。
このブログでは、お話させていただいた内容について、かいつまんでご紹介させていただきます。
ノバセルにおけるデータ基盤の役割
ノバセルでは、テレビCMをウェブ広告のように分析・運用する「運用型テレビCM」を主力事業としてきました。現在はテレビCM以外にもさまざまなマーケティング支援サービスを展開しています。共通して、データドリブンなマーケティング支援を展開しており、属人化や広告効果の不透明性を排除し、誰でも効率的にマーケティングを行える世界を目指しています。
そのような「マーケティングの民主化」を実現するため、ノバセルのデータ基盤は「データで全てのプロセスをエンパワーする」をテーマとして開発を進めています。その中で主に3つの利用シーンがあります。
- KPI管理の自動化
- 従来はスプレッドシートや手作業で管理していたKPI管理をSnowflakeを活用して効率化。
- 社内業務の効率化
- 社内で日々行われるマーケティング分析を、データ基盤を用いて効率化・自動化し、業務の負担を軽減。
- 事業開発のサポート
- マーケティング施策や効果を可視化するサービスの裏側で、大量のデータを管理・集計するパイプラインを構築。
なぜSnowflake / TROCCOを採用したか
データ基盤としてSnowflake / TROCCO を選定した理由は2つあります。
初期構築の容易さ
- Snowflakeは初期設定がシンプルで、迅速にデータ基盤を立ち上げられる点が大きな魅力でした。これにより、短期間でデータ活用を開始でき、ビジネスにすぐに貢献できる基盤が整いました。
- TROCCOも同様に、GUIからのセットアップでデータを取り込めるため、エンジニア以外でも利用でき、立ち上がりが非常に素早くなります。
拡張性の高さ
- もう一つのポイントは、将来的な拡張時におけるアジリティです。Snowflakeは拡張性が非常に高く、ビジネスの成長に合わせてスケールアップが容易です。
- TROCCOも、多数のコネクタやデータ処理機能が充実しており、データソースを幅広く活用できる点も評価しました。
データ基盤構築後の課題
データ基盤を構築した後、主に2つの課題に直面しました。
データ基盤の活用が広がらない問題
データ基盤を整備したものの、社内で十分に活用されないという問題に直面しました。これは、基盤そのものの認知度が低かったことや、分析結果をどのように利用すべきかが社内で理解されていなかったことに起因しています。
このような課題に対し、以下の打ち手を講じました。
当初なかなか上手くいかない時期もありましたが、データ基盤を利用する人数は2年で5倍になり、複数の部門でデータ基盤を活用していただけるようになっています。
改善のリソースが不足する問題
もう一つの課題は、分析や改善に必要なリソースが不足しているという問題です。この状況は、特に以下のような事例で顕著に表れました。
実例:ある日、私たちのチームはビジネスデータの提供を行い、追加要件に基づいてダッシュボードを作成しました。しかし、その後ダッシュボードの利用状況を確認すると、期待したほど活用されていないことが判明しました。この原因はいくつか考えられますが、以下のような点が挙げられます。
- ビジネス環境の変化
- 事業所の変化や、業務の優先度が変更され、ダッシュボードの必要性が薄れてしまった。
- 情報の取り扱いに対する不安
- ダッシュボードに対して「使いこなせない」という不安感が影響し、実際の利用につながらなかった。
- リソースの不足
- 分析や改善のための時間や人員が不足し、ダッシュボードの継続的な活用が困難だった。
このような課題に対し、以下の打ち手を講じました。
特に、ビジネス側のステークホルダーを適切に巻き込み、改善サイクルを回せるような体制づくりをまず整えることが重要だと感じています。
成功例を通じて得られた勝ちパターン
2年ほどの運用経験でうまくいった事例・そうでない事例を見比べていくうちに、弊社における勝ちパターンを見出すことができました。
活用のビジョンを共有し、巻き込む
- なぜデータ分析基盤を使う必要があるのか、使うと何が良くなるのか、どのような将来を目指しているか?といったビジョンについて共有することが重要です。成功したプロジェクトでは、目的が明確であったため、関係者が一丸となって取り組むことができました。
ビジネス部門のオーナー、旗振り役を立てる
- データ基盤の導入が技術部門から進められたという事情もあり、技術部門主導で進めるプロジェクトも多かったです。しかし、ビジネス部門にオーナーを立て、そのオーナーがしっかりとプロジェクトにコミットしたり、ビジネス側への浸透旗振りを行うことが重要です。
欲しいものを自分たちで作れる(セルフサービス)環境を作る
- ビジネス側の事情が変化した際に、都度技術部門への依頼が必要になる仕組みはスケールしませんし、「使い続けられるデータ基盤」にはなりにくいです。成功事例では、ユーザー自身での継続的な改善を実施できるようにドキュメントの整備やレクチャーの実施などにより、プロジェクトの成果が向上しました。
データ基盤の活用推進に限らず一般的に重要なポイントかと思いますが、この3点をまず担保することが肝要です。
データ分析基盤が使われるようになるとどうなるのか
データドリブンな意思決定と共有
- データ分析基盤が導入された結果、意思決定の高速化ができるようになりました。KPIのモニタリングや分析が行いやすくなり、事業上のボトルネックなどをより早く発見・共有することができるようになりました。
業務効率の向上
- 自動化されたデータ収集や分析プロセスにより、分析業務の効率が大幅に向上しました。これにより、分析チームはより戦略的な業務に集中できるようになりました。
商品開発への活用
- データドリブンなマーケティング支援を行う上で、データ基盤を上手く活用することで、商品開発の高速化が可能だと考えています。ほぼ全てのメンバーがデータ基盤を利用して開発を行える環境が整備されました。
今後の展望
現在地として、「勝ちパターン」を理解し、それにより成功例を積み上げていくことが出来る状態になりました。今後は「勝ちパターン」を横展開していくにあたりボトルネックとなるであろう領域をカバーするため、以下のような施策に取り組んでいきたいと考えています。
おわりに
昨年の SNOWDAY Tokyo 以来、Snowflakeの公式カンファレンスにて登壇させていただきました。前回登壇時から1年半ほどで、データ基盤の活用が大きく進展しており、資料を作成しながら感慨深く思ったのを覚えています。この記事では概要しかご紹介しておりませんが、ご興味を持たれた方はSnowflake World Tour Tokyo 2024よりオンデマンド配信をご覧いただければ幸いです。 ここまで読んでいただきありがとうございました。