この記事は ノバセル Advent Calendar 21日目です。
こんにちは。ノバセルにてプロダクトマネージャーをやっている林です。 7日目の記事に続き、2回目の登場です。
はじめに
本記事では、今年私が経験したちょっと特殊な出来事についてお話します。それは、エンジニアリングもピープルマネジメントもどちらも経験がない状態で、PdMの仕事に加えてEMの役割まで兼務することになった、というものです。
※補足:厳密に言うとEMの責務を全て担当したわけではなく(それは無謀すぎます笑)、こちらのEM定義におけるプロダクトマネジメント/ピープルマネジメントの領域を主に担当しました。 テクノロジーマネジメント/プロジェクトマネジメントの領域は、メンバーの中に別に担当を立て、その方と協力しつつ一緒に推進しました。
PdMとEMを兼務している場合はあるとしても、基本的にはエンジニアリング/ピープルマネジメントのどちらかはやったことがある前提であることが多いと思います。 しかし、私の場合、両方未経験で兼務するというチャレンジを半年間しました。
その半年間は、まさに手探りの連続でした。 「1on1ってどうすれば上手くいくんだっけ?」「人事評価ってどうすればいいんだろう?」。 そんな基本的なことすら分からず、色々試行錯誤しながら進めていました。もちろん、上手くいったこともあれば、全然ダメだったこともたくさんあります。
この記事では、そんなジェットコースターのような半年間で、私が実際に体験したことを共有したいと思います。
半年間にあったことを詳細に語るのは紙幅の都合上難しいので、以下では
兼務を引き受けた時の心境
上手くいった点
難しかった点
についてお伝えできればと思います。
兼務を引き受けた時の心境
(兼務になった背景は長くなるので割愛しますが)初めて兼務の話を聞いた時、正直かなり戸惑いました。
確かにPdMとしてはそれなりに経験を積んで来ましたが、私自身はBiz出身のPdMなので、エンジニアリングの各論になると分からないこともあります。 それに、ピープルマネジメント経験も全くありませんでした。 「そんな私が、いきなりチームを率いることが本当にできるんだろうか?」 何日もグルグル悩んだことを覚えています。
最終的に引き受けた理由としては、「この挑戦をやり抜けば、PdMとしても人間としても、めちゃくちゃ成長できるんじゃないか?」「このまま逃げ出すのは、あまりにも勿体ない」という思いが湧いたためでした。 「状況は捉えようによっていくらでもプラスに変えられる」と前向きに考えて飛び込めたのは、今振り返っても非常に良かったと思っています。
また※補足でも書いた通り、EMの役割の全てを一気に担う訳ではなく、メンバーと役割分担しながらだったのでチャレンジしやすかった、という面も非常に大きかったです。
色々な葛藤がありましたが、私はPdM/EM兼務というチャレンジを引き受けることにしました。
上手くいった点
PdMとEMの兼務を始めてまず最初に取り組んだのは、チームメンバーとの信頼関係を築くことでした。
「よく分からない人がやってきて、抽象的な目標を掲げて仕切り始める」という状況は最も避けなければいけないと当初から思っていました。 そうならないために、まずはメンバーがどんな人柄なのか、何を考えているのか、どんな強みを持っているのか、をじっくり把握することから始めました。信頼関係がない状態で、「こういう方向でいきたい!」って言ったところで、誰にも響かないですからね。
そこで、特に重要視したのが、1on1での会話です。メンバーと一対一でじっくり話せる1on1の時間を、どう有効活用できるかを、色々と試行錯誤しました。
特に意識したのは、「メンバー自身を知る」ことから始めることでした。 ノバセルには、入社時に書く「自己紹介ページ」というものがあります。1on1の初期は、それを見ながら、「どんなキャリアを辿ってきたのか?」「なぜノバセルを選んだのか?」「ノバセルでどんなことをしたいと思っているのか?」といったことを、深く掘り下げて聞きました。
その中で、自然とWill/Can/Must的な話も聞けたので、メンバーの個性を理解する上で、非常に役立ちました。
そして、もう一つ、効果的だったなと思うのは、自分がボトルネックにならないように、チーム体制の構築に力を入れたことです。
兼務を始めた当初から、「自分がボトルネックになってはいけない」ということは、強く意識していました。もし、プロダクトや組織に関する全ての意思決定を私が行うことになったら、自分が単一障害点になるのは目に見えていました。
そこで、マネジメントに必要な役割を分解し、それぞれの役割をチームメンバーに権限移譲することにしました。具体的には、マネジメントに必要な要素を以下の3つに分解しました。
プロダクトマネジメント: 顧客に必要な機能を発見し、ソリューション検討をリードする役割
チームリード: チーム運営における意思決定をリードする役割(スクラムの円滑な運営、スクラムマスターっぽい仕事等)
テックリード: 開発における技術的な意思決定をリードする役割(仕様の詳細化など)
このうち、最初のプロダクトマネジメントは私が担当し、残りの2つは信頼できるチームメンバーに移譲することにしました。もちろん、ただ丸投げするのではなく、「こういうことを期待している」ということを1on1で会話しながら認識合わせをし、困ったことがあれば1on1で相談してもらうようにしました。
早めにこの分業体制を作れたことは、チームをワークさせる上で非常に効果的だったと思います。と同時に、この体制がうまくいったのは、自主的に動いてくれる優秀なメンバーの方々に支えられたからだと、心底思っています。
例えば、チームビルディングのワークショップをメンバー主導で開催してくれたり、技術力を高めるための「技術1on1」をメンバー間で自主的に開催してくれたり。本当に、チームの皆さんには感謝しかありません。
難しかった点
分業体制を敷いて、ある程度の負担軽減には成功したものの、やはりPdMとEMの兼務は、想像以上に大変でした。特に苦労したのは、プロダクトの中長期的な方針を考える余裕がなくなってしまったことです。
チームメンバー5人全員との週1回の1on1、それに加えてチーム運営の課題への対応など、どうしても日々の業務に追われてしまう時間が増えます。
そうなると、どうしても短期志向になりがちです。目の前にある機能をデリバリーすることだけに意識が集中してしまい、「それって本当にユーザーにとって価値があるものなのか?」「もっと他にやるべきことがあるんじゃないか?」といった、より大きな視点での検討がおろそかになってしまいます。
理想としては、もっとユーザーと直接会話する機会を増やして新しいプロダクトの種を見つけたり、6ヶ月後/1年後/3年後といった中長期の視点でプロダクトのあるべき姿を考えることに時間を使うべきです。しかし、目の前のタスクをこなすだけで精一杯で、なかなかそこまで手が回らなくなったというのが実態です。
正直に言うと、この課題は兼務していた期間中は最後まで解消することができませんでした。 現在は、PdM/EMの兼務体制は解消しています。PdMの役割のみになった今はプロダクトマネジメントに集中できているので、中長期的な方針を考える時間もしっかり確保できており、いいバランスに戻ったなと思っています。
やはり、「PdMとEMが分業されているのには理由がある」と改めて実感しました。それぞれの役割には、それぞれ異なる専門性と責任範囲があり、それを一人で担うというのは何かがトレードオフになります。もちろん、兼務によって得られた学びもたくさんありましたが、同時に「適切に役割分担することの重要性」も身をもって痛感しました。
まとめ
今回は「エンジニア/マネジメント未経験でPdM/EMを兼務してみた学び」をお話しました。 同じようにPdM/EMの兼務に悩む人、PdM/EMの役割に興味がある人にこの記事が少しでも役に立てば嬉しいです。
明日は今年の新卒メンバーが、BI as Codeに関する記事を書いてくれるそうです。お楽しみに!